南康人 2016年6月6日

結局「教育機会確保法案」は秋の臨時国会で継続審議となるらしい。馳文科相としては、絶対、廃案にはさせないという不退転の決意らしく、「秋の国会では必ず成立させるべく与野党で協力する」とのこと。
なんで世論から全く反対の声が聞こえてこない「夜間中学」だけ切り離して立法化することはしないのか。前にも書きましたが、僕が思うに、この法案の本当の狙いは公教育の「公設民営」というかたちをナショナル・レベルで制度化するところにあります。
だから、「特例」としての縛りがある法律なら、馳文科相(とその背後に隠れている超党派のネオリベラル教育改革派)としては、今更わざわざ立法化する必要を認めない。あくまで公教育全体を包括する「公設民営」の制度化にこだわってるわけです。
先日、映画『みんなの学校』上映実行委員会の総括会議があって、いろいろと感想や話を聞いてきたのですが、「障害児を普通学校へ・全国連絡会」はこの法案 に反対です。法案の中身は新たな分離別学の「細分化」なわけで、このような教育「多様化」は inclusion ではなく segmentation の推進であるということで、インクルーシブ教育の側からは批判されて当然でしょう。
ちょうど臨時国会前の8月28日に福井でもインクルーシブ教育の集いが企画されているので、この法案についても議論できたら良いなと思ってます。
映画への反応ですが、主催者が20人くらい、一般鑑賞で来場してくれた方が88名で計100名ちょっとでした。一般来場の方の情報源はほとんどがSNSと 新聞告知。紙のチラシはコストがかかるだけで、不特定多数への広報では、もうほとんど費用対効果なしという事がよくわかりました。
特定の対象しぼった広報ではちょっと事情が違って、「不登校の親の会」会報発送でチラシを同封したら、意外にたくさん来てくれました。土曜に観た親が学校 の校長や学年主任に電話して、「ぜひ観てほしい」と直談判して、日曜日に学校の先生方を連れてまた観にきてくれたり。「障がい」や「インクルージョン」と いう視点よりも、「学校を問う」という問題意識がヒットしたようです。
発達障害の親の会にもチラシ撒きましたけど、こちらはほとんど反応なし。お隣の石川県とちがって、福井県はインクルーシブ教育に対する取り組みが非常に少ないという現状の反映かと思います。
インクルージョンと「不登校対策」という話は、もう数年前に福井の自立生活センターの代表だった故・高畑くんと機関誌上で対談したときに取り上げたテーマ だったんですが、もう一度、きちんと肉づけして考えてみないといけないなと思ってます。彼が生きてたら、ぜひこの法案について意見を聞きたかったところな んですが残念。