東陽片岡の女人追憶【第11回】
ワタヒは長い事お風俗ルポ漫画などを描いてきた訳でありますが、実に様々な熟女ホテトル嬢と出会ってまいりました。
極楽浄土の巻から無間地獄の巻まで、今ではどれも酒の肴になるほどの良い思い出となっております。
そんな多くの熟女ホテトル嬢の中に、酔っ払った状態でラブホテルにやって来た方がおります。数年前にお相手していただいた、鶯谷・某店のSさんつー四十代後半のおネエさんであります。
おスケベチャイムで、ンチャッとドアを開けた瞬間から酩酊が解る佇まいでしたので、かなりアルコールを摂取してきた模様であります。
んで部屋に入っていただいたら、まずは一服です。飲み物を勧めると、「じゃ、缶チューハイにしようかな」なんちーながら、冷蔵庫から 取り出すなりプシュッとフタを開けるSさんに、内心「シマッタ」と思いつつも、とりあえず笑顔で乾杯の巻であります。
和気あいあいとしたフンイキで話が盛り上がります。するとSさん、「もう一本いいかしら?」なんつーからアセりました。「居酒屋じゃねぇんだこの野郎」と心で叫びながら、やんわりとシャワーを促します。
さて、おベッドタイムであります。なんつーか、酒臭くて反応も鈍く、今にも寝てしまいそうなSさんに、すでにこちゃらは戦意喪失状態。そこそこ容姿が良いだけに、しこたま残念であります。つってもお金がもったいないので軽く一発だけ済ませ、残り時間はご歓談タイムで和むことにします。
ヤケクソ気味にこちらもプシュッと一杯やらせていただきます。ふと 壁の棚を見ると、なんと、カラオケ装置が置いてあるではありませんか。おスナック好きのワタヒとしては、今回のこの悲況を、歌うことで紛らわすしかないと思いました。
お互い素っ裸で「別れても好きな人」などデュエットであります。Sさんも結構好きなようで、次第にリモコンを独占し始めます。ピッピッとテレサ・テンの「つぐない」が入ります。おスナックのママがよく歌う、水商売の定番曲であります。
せつないメロディーに乗り、缶チューハイ片手に歌い出すSさん。サビに入ったあたりで、ポロッと涙が落ちます。そしてそれは次第に、号泣へと変わっていくのでした。
まるで「ルックルックこんにちは」の「ドキュメント女ののど自慢」状態でございます。
立ったチンポを慰労するためにホテトルへ来たのに、缶チューハイを二本も飲んだあげく、泣きながらカラオケを歌われるとは思いませんでした。まったく、泣きたいのはこちらのほうですが、ルポ的には面白いネタを頂戴出来たので、その点だけは救われた気がしました。
つー訳で、今でもおスナックで誰かが「つぐない」を歌うと、そんな鶯谷のSさんを思い出してしまうのでございます。たみゃらん。