月刊『極北』、今月もまた「刊行」が大幅に遅れてしまいました。どうせ読者の少ない事はヨック自覚しておりますが、それならば尚一層の事、今いる微小の読者を大切にせねばならないのが道理、その辺の機微もまたヨック存じ上げているつもりですが、正真正銘、今月号に関しては、ワタクシ事に拘るやむを得ぬ事情も有り、結局、かかる失礼を働いてしまいました。
 上記のような事情も有り、今回の「編集部便り」は下記の新刊案内のみとさせて頂きます。次号は、必ず今月末刊行を目指し、編集部便りも年末に相応しい? 内容でお届けしたいと考えております。

 以下は新刊案内です。
 今月中旬に見本出しをすませ、年末年始のお休み前には何とか全国書店の店頭に並べて頂けると思います。

 関係者各位

2013年12月吉日 

 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
早速ですが、この度、小社より昨年8月に91歳の生涯をとじられた哲学者で京大名誉教授の上山春平氏の『憲法第九条――大東亜戦争の遺産』をお届け致します。

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 本著の帯にも記しましたが、氏は青春のすべてを賭けて大東亜戦争に身を投じ、回天特攻隊の一兵士として二度出撃し、奇しくも二度とも生還しました。その尋常ならざる体験のゆえもあってか、氏は問わずにいられませんでした。
 あの戦争から未来へと歴史をつなぐとしたら、その道はどこをどう通ればよいのかと――。自らが発した問いの答えを求めて問いつづける情熱、その祈りにも似た思索の姿、それが本書だと思います。
 本著は氏が主に60~70年代に発表した憲法及び国家に関して触れた幾つかの論文を纏めたものの復刻版です。当時の時代的制約もあり、それを今日の読者がどのように読むか、その解釈は様々だと思いますが、現在の喧しい憲法論議の中にあって、発表後、約半世紀を経過して今尚色あせない問題提起の新鮮さ、その意味する事の重さに驚きを禁じえません。
 本著が復刻によって、新しい読者を獲得し、昨今の憲法論議、この国のあり方など、幅広い議論に一石を投じる事が出来れば編集者として幸甚この上ございません。
 尚、本著復刊に当たっては、70年前後、全国の多くの大学で展開された全共闘運動の渦中にあって、教官の立場から積極的に発言し、全共闘系学生に少なからぬ思想的影響を与えつつも、71年に起きた自衛官刺殺事件(いわゆる「朝霞事件」)の“黒幕”と喧伝され、全国指名手配、10年余の逃亡生活の後逮捕、一貫して無実無罪を主張するも、7年後の1989年懲役5年の有罪判決、但し未決勾留期間の期日認定が判決日数を上回ったことから即釈放された、元京大経済学部助手、「滝田修」こと、たけもとのぶひろ氏に長文の解題を担当して頂きました。
 たけもと氏がこの種の文章を手がけるのは、実に遡ること40数年ぶりではないかと思います。本著については勿論の事、解題についても、忌憚ないご意見・ご感想をお聞かせ頂ける事、願って止みません。
 今後とも倍旧のお付き合いを賜りますよう、宜しくお願い申しあげます。