東陽片岡の女人追憶【第8回】

東陽片岡[第8回]
2013年11月6日

 カズちゃんつーおネエさんがおります。
 かれこれ20年近く前、某熟女ホテトルで知り合った方で、なんとなく営業時間外での交流が始まり、よくウチへ遊びに来るよーになったのであります。
 カズちゃんは、若干太めの体型とノンビリとした性格の持ち主であります。顔面は作りがしっかりとしており、チベット民族のような顔立ちで、あるアングルから眺めっと、原節子っぽく見える時があります。とはいえ、概して地味な感じの女性であります。
 その当時ワタヒは、ゴミや雑誌類が散乱した、25平米のすさまじくこ汚い部屋に住んでおりました。次第に寝る場所も無くなり、ついには押し入れを寝床にしておりました。
 そのジメついたスペースにて、都合三名の女性とおセックスをさせて いただきましたが、カズちゃんはそのうちの約一名であります。
 彼女はウチへ来ると、まず冷蔵庫を開けます。んで腐った卵や牛乳以外の食糧を見つけると「これ食べていい?」つって、ムシャムシャと食い始めるのです。話を聞けバ、日々知人宅を回り、同様の行為で食費を浮かせているそうです。まるで野良ネコであります。
 お風俗で知り合ったからといって、カズちゃんはそう簡単におセックスをさせてくれません。
 一度風邪をひいて寝込んだ時、看病してもらった事があります。その親切さにグッときたワタヒは、背後からハエトリグモのよーに抱きつき、布団に引きずり込んだのであります。その時、ブッと音がして、チンポに振動が伝わりました。なんと、彼女は小バエみたいに捕獲され つつも、ワタヒに屁をかけたのでございます。もはや彼女に対する性的欲求は消え失せました。
 つー訳で、押し入れでカズちゃんとおセックスをしたのは一度だけ。あとは茶飲み友達的な付き合いとなったのでございます。
 彼女は常にヒマな人間でした。電話で呼ぶと必ず「うん、わかった」つって、我が家にやってまいります。大変便利なので、締め切りに追われている時など、日当五千円でベタ塗りなど手伝ってもらいました。カズちゃんは某美大出身なのだそうです。絵心があるせいか教えるとすぐに上達し、上々の仕事ぶりでした。
 更年期障害が悪化して、ホテトル店を辞めた後、彼女は居酒屋の店員、男女交際クラブの受付係、ラブホテルの清掃員など、職を転々とし始めます。
 そのう ちワタヒも電話をしなくなり、二、三年に一度連絡を取り合う程度の関係になっていきます。ワタヒより六つ年長のカズちゃんは、今年で61歳になります。
 先日、数年ぶりに電話をしてみたら、相変わらずノンビリとした口調で近況を語ってくれました。
 最近は脳ミソの按配が思わしくないそうで、医者へ行って検査したところ、統合失調症と診断されたそうです。「大丈夫かい?」と聞いたら「よくわかんないのよ」と言っておりました。
 現在は茨城にある実家の近くにアパートを借り、一人で暮らしているそうであります。
 そのうち、久しぶりにこっちへ遊びにおいでと誘ってみようと思います。たぶんカズちゃんは「うん、わかった」つって、すぐ来てくれる気がします。たみゃらん。  おひまい