7年後、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まって以来、週刊誌などでやたらと目に入るようになったのが、その時、あなたやあなたの会社はどうなっているだろうか? と言った類いの近未来予測記事である。
 順風満帆、日々これ充実の毎日を送っている者にとってはともかく、筆者のように日々これ苦行我慢の試練にさらされている者にとっては、たかが週刊誌の戯れ記事と無視もできず、ついその度に立ち止まって、自分の来し方行く末を考えさせられるのであった。

 それは、事務所で摂る夕餉のだんらんの時にも話題になった。
 『(7年後)みんな、どうなっているんだろうね』
 誰に振ったわけでもないがそれとなく口にだしてみると、
 『そうねえ、あんたは身体障害者になって、選手でパラリンピックに出ているかもね』
 嗤いながら応えたのは、事務所の風紀女史である。
 事務所にいる愛犬に注ぐせめて10分の1くらいでも筆者への気遣いが欲しいところであるが、筆者が日頃、エリック・クラプトン、ビートルズ、CCRなどとともに、よく聴いているのを熟知してか、更に『入場行進曲はベンチャーズで(http://ja.wikipedia.org/wiki/ザ・ベンチャーズ)』と揶揄の追い打ちまで仕掛けてきた。

theventures

(その後、パラリンピック絡みで、活字にするのが憚られるようなブラックな会話が続くのだか、そこは省略するとして)オリンピック、パラリンピックの入場行進曲がベンチャースと言うのはいいアイデアだと思い、筆者はすぐその話題に食いついた。
 閉会式だったけれども、ロンドンではポールが歌っていた。ロンドンがポールなら、日本にはベンチャースがいるではないか、というわけである。
 ベンチャーズ。50年の長きに渡って、毎年夏になると日本に出稼ぎにやってきて、全国津々浦々隈無く回るその演奏活動は、もはや日本の夏になくてはならぬ風物詩であり、単純にして味わい深い50年不易のあのテケテケサウンドは、ほとんど伝統芸能の域に達していると言うのが筆者の見解なのであった。

 『その前に、彼らに国民栄誉賞を出すべきだと思うんだよ』
 筆者の口調も段々調子に乗って熱くなってゆく。
 『ベンチャーズは日本人じゃないし……』
 こうなると自分からベンチャーズを出しておきながら風紀女史も辟易ぎみである。
 『そんなの関係ないよ、(巨人の)王だって日本人じゃないぞ』
 「うるさい! パラリンピックで金メダルとって自分でもらえばいいじゃないの」
 ほとんど聞く耳を持たない対応になってきた。
 『いや、それは無理だな、俺がお上から貰えるとしたら逮捕状くらいだからね』
 つまらない自虐ギャグである。
 『今まで何回貰ったの』、
 『四回』、
 「(苦笑)」なぜか食卓の話題はいつもブラックの方に流れて、笑いが絶えないのであった。
 せめて7年後もこうして夕餉の団らんを過ごせればいいのだけれど……、筆者の思いは極々慎ましいのである。

 『極北』の原稿、予定では3本あがる予定でしたが、締め切りの今日(11月4日)の朝までに1本も届きませんでした。しかし、月刊と銘打っている以上、休刊にするわけにも行かず、心ならずも、編集部提供の原稿一本の「刊行」となりました。日頃ネットへの不信を隠さない『極北』ですが、紙の媒体ではこうは行きません。確かに便利ではありますね。

 rengoDMSの特別企画、10月26日の宮台真司さんの講演、参加者は10人余と少なめでしたが、質疑応答、その後の宮台さんも参加しての居酒屋での二次会と、計4時間、活発な議論が展開することができました。結果よければ総て善し、いい集会でした。

miyadai

 場所を提供して下さった連合設計社をはじめ、電話でお友達を誘ったり、ツイッターで集会の告知を紹介したり、色々ご協力して下さった方にはこの場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。