「我に還らず」(第1回)

居島一平[第1回]
2012年9月25日

 もはや世界中で人気の鳥山明氏の代表作といえば漫画「ドラゴンボール」、7つ揃えたらどんな願いでも叶えてくれるという“神龍(シェンロン)”がなんと目の前にいた。気付けば手元にちょうど球(ボール)が7つ。
 さて何を望む? と聞かれて迷わず一言、
「頼むから中国という国家を、この地上より永遠に消滅させてくれ!」……漱石先生じゃなが“こんな夢を見た”。

 当今なにしろ全て「大人の事情」で「冷静に対応」せねばならぬのが鉄則のご時世。
 国後島にロシアンマフィアの群れが大挙上陸しようが、竹島を奥崎謙三(「ゆきゆきて、神軍」)似の貧相な韓国人が笑顔で不法占拠しようが、いつ落ちるか分からぬポンコツ輸送機をまとめて押し付けられようが、いちいち怒りや不快をあらわにするだけ野暮も野暮、大野暮春彦の極みってな具合で……ましてお茶の間に至っては焼け野原。
 敬語も礼儀もわきまえぬ無知でバカなハーフの小娘を「タメ口キャラ」の肩書きで野放し放題にし、ひねこびた台詞まわしばかり巧みで空気を読むのに長け、妙にませた薄気味悪いガキどもを「天才子役」ともてはやす惨状も、白目でやり過ごすほか打つ手なしなわけで。とにかく怒っちゃだめなわけで(「北の国から」の純こと吉岡秀隆口調)。

 しかし耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶのにも我慢じゃなくて体力の限界(千代の富士)があるというもの。
 こちとら“戦後生まれの傷痍軍人”をキャッチフレーズに舞台で軍国漫談をほざき倒す“通りがかりの右翼”が芸人稼業の上での、あくまでネタとはいえ、やはり心情的には崖の上のポニョより坂の上の雲、有酸素運動より自由民権運動、リア充より火縄銃、岩盤浴より戦闘意欲が大事、と思いたい。
 とにかくここしばらく延々これでもかとテレビやネットで流される映像、支那の大漁船団の旗・旗・旗の波……あれ見て昔なら矢崎滋時代の「白鶴 まる」のCMを連想したろうが(これユダヤジョーク)、文字通り尖閣諸島に千客万来状態の上、海上保安庁の監視船を日本語で脅迫してくる有様、そして一連の反日デモを隠れ蓑にした、日本企業及び日本人への悪質極まる略奪暴行の数々……まあ絵に描いたような「愛国無罪」ぶりで、文革の頃から本質的にあの国が何も変わっちゃいないのが如実に分かる。
 19世紀フランスの外交官タレイランが言った、「愛国心はならず者の最後の逃げ場所」という言葉の持つあまりにも切実な説得力よ。
 今更手垢が付き過ぎて、という表現自体がたっぷり手脂のぬめりを帯びた陳腐さながらドンピシャなのは仕方ない。いやでもマルクスの名文句、「歴史は繰り返す、一度は悲劇として、二度目は喜劇として」を想起せずにはいられまい。

 「対華二十一ヶ条要求」といえば、ほぼ100年前の1915(大正4)年第一次世界大戦のさなか、我が帝国政府が第二次大隈内閣のもと、袁世凱率いる中華民国に、大陸における日本の国益確保の承認を求めて「つきつけた」(という言い方を教科書はしますね。“クリスチャン”といえば条件反射で“敬虔な”と冠するのと一緒でなんにも考えてない空疎な慣用句に過ぎないが)ことになっている史上悪名高いシロモノだが、あの時の状況とずばり同様の(ある意味では日中真逆の)事態が現在の緊迫した関係なのではなかろうか。
 共通するのはそれまで蓄積された議論を常に一方的に無視する中国の俺がルールブック的やりくち(この点いわゆる「識者」で日本の当局に対して“大局的見地からの対応云々”などとのたまう輩は、尖閣の領有権を明の時代にまで遡って主張し、あげく沖縄=琉球まで返せと言い出しかねない中国の“大局的見地”からの言い分をどう解釈し反論するつもりなのか)、こちらがいくら噛んで含めるように説得しようと聞く耳持たぬ態度であり、違うといえば残念無念ながら日本が完全に自前の独立した国力(軍事力)を持って屹立していない点のみであろう。

 思えば常に被害者の立場、弱者面を強調し歴史の問題を政治的な交渉カードにすり替え、日本を倫理的道徳的な側面から恫喝することに血道を上げてきた彼らに、今こそTPPの是非よりも、維新八策よりも前に、21世紀の「二十一ヶ条要求」を青天白日(台湾の旗!)のもとに明示すべきではないか。
 密かにおもんみるに、今世紀初頭の10年間すなわち一部で言うところの「ゼロ年代」とは何だったかというと、“韓国とパ・リーグが急にオシャレになった10年”で総括するに足る。ロッテ南海戦がナイターの時は川崎球場の外野席に身元不明の遺体があったなどとキツいシャレにされた頃から考えればイチローの出現はおろか、ダルビッシュや齋藤祐樹のようなスターがよりによって日ハムに行こうとは、天下の誰が想像したろうか。犬鍋とキーセンとポンチャックの韓国がイケメンとK―POPとエステと美容整形の国になるとは、なんぴとが予想しえただろうか。
 余談はさておき、これに加えて言うなら中国が居丈高に図に乗り出した10年でもあるというわけだ。次回から世界の眠れる獅子ならぬ遅れてきたジャイアン否ブタゴリラ、中国に「つきつける」べき二十一ヶ条の詳細を列挙して参ろうと存ずる。
 事ここに及んでやれ日本製品不買だの、観光旅行大量キャンセルだのと経済制裁めいたことをちらつかせる中国には、「報復措置」などという貧乏臭いことは言わず、とっとと前倒しでパンダを返しちまおう。
 それも全部脱色して全身真っ白にして鼻だけ赤く塗って日の丸にして返すのは如何。ついでに欧陽菲菲とアグネス・チャンも添えて送り返しましょう(おっとこれはアメリカンジョーク)。