[編集部便り]
どうでもいいことですが……。(11)

(1)道路と化した公園でボールを追うラッキー

(1)道路と化した公園でボールを追うラッキー

 前回の本欄で、ラッキーの散歩コースに、ニワカ駐車場らしきモノが目立つようになった事をお伝えしたが、今回は駐車場ではなく、道路建設のお話である。ラッキーの散歩コースに当たる余丁町界隈は、現在、新宿通りから若松河田に繋がる「抜け道」の建設工事の真っ最中で、これが完成すると付近の町並みがすっかり変わってしまいそうな気配である。
 工事自体は既に数年前から噂され、その間、土地の買収など下準備は私の与り知らぬところで着々と進んでいたのだろうけれども、目に見えて風景に変化が感じられ始めたのは、この一、二年くらい前からだ。
 既存の道路の拡張工事と違い、都心の住宅地をざっくり切り割いての新道路の開設である。しかも片道二車線はありそうだ。ここまで来るには、多分、土地買収など、相当手を焼いたのだろう。
 それで、少しでも交渉の苦労を軽減したいという魂胆だったのか、わずか1キロメートルくらいの区間に二つあった区立の遊園地の一つがまず最初に血祭りにあがり、有無を言わさず、さっさと更地にされると、現在はアスファルトも敷かれて、完全に道路一丁あがりと言う感じにされてしまった。
 かつてこの場所は、単にラッキーの散歩コースというに留まらず、紐を外して敷地内を自由に走り回れて、犬に取っては嬉しい場所だったし、また犬同士、飼い主同士の交流を楽しむ貴重な空間でもあっただけに、私としては実に残念におもっている(写真1)。私は道路建設に反対なのである。

(2)余丁町児童公園近くまで道路工事が迫る

(2)余丁町児童公園近くまで道路工事が迫る

(3)余丁町児童公園

(3)余丁町児童公園

 現在の工事の進捗状況は、若松河田側にあるこの公園から、新宿通り方向に更に食指を延ばして、新たな整地作業に入っているけれども(写真2)、その先には区間内二つ目の遊園地である「余丁町児童遊園地」が控えている(写真3)

刑死者慰霊塔

(写真4)刑死者慰霊塔

 しかし、この遊園地、ただの児童遊園地ではないのだ。かつてここに東京監獄市ヶ谷刑務所があり、幸徳秋水など12名の大逆事件の被告をはじめ、総勢290人が処刑されているのである。幸徳が処刑されたという刑場跡に今「刑死者慰霊塔」が建てられ、先日もラッキーと散歩の途中訪れると、誰の手によるのか花が手向けられていたが(写真4)、間近に迫ってきた工事の槌音にこの慰霊塔の運命はどうなるのだろうか。気掛かりなのである。

(5)ラッキーと記念樹

(5)ラッキーと記念樹

 文字通り、どうでもいいことですが、この「余丁町児童遊園地」何かに呪われているのではないだろうか? 実は園内に「誕生記念樹 新宿区」「平成11年7月~12月に生まれた赤ちゃんを記念してここに植樹します」と謳って、桜が植樹されているのだけけれども(写真5)、その大切なハズの、とりわけ「平成11年7月〜12月に生まれた赤ちゃん」に取ってはヒト事ではないハズの、この「命の木」が、なっ、何と、完全に枯れてしまっているのである! これに私が気付いたのは3月31日の事であった。
 たしか、この2日前、気象庁は東京地方の今年の桜の開花宣言をしていたが、わが「余丁町児童遊園地」の桜は遅れる事2日、まだ満開にはなっていなかったものの、それでも七分咲き位に花をつけて、更に今後勢いを増そうかという感じにはなっていた。その中にあって、件の「命の木」だけが冴えないのであった。よくよく見ると枯れているではないか!
 平成11年ということは、今年17歳である。記念樹は17年の命であった。よりによってこの木だけがね……。木の運命も分からない、人間の運命も分からない。道路の運命も分からない、何が起こるか分からない。この地が呪われていない事を願う。290人の魂魄が彷徨っているのである。