留学生アラレ姫の東遊記(5) お正月の巻

アラレ姫[第5回]
2016年1月5日

太陽がぐんぐん昇り、湖の投影にある太陽も加えたら、2つの日球が同時に光り、その光は異常に眩しかった

太陽がぐんぐん昇り湖の投影にある太陽も加えたら、2つの日球が同時に光りその光は異常に眩しかった

 今年、日本式のお正月を楽しんできた。
 日本式といえば、年越しそば、鏡餅、門松、初詣などが思いつくが、今年は、これらを一個も実践していなかった。でも記念になれるのは、富士山の初日の出を見に行ったことであった。
 大晦日の夜、友人と一緒に近所のレンタカーから車を借りて、初日の朝4時ごろ、富士山へ出発した。おそらく富士山付近で場所をとっておいて、徹夜して日昇を待つ人もいるかもしれないけど、私たちはプロのカメラマンでもないし、日昇をみれれば十分だと考え、6時半ごろに到着することを目指していた。目的地は精進湖であった。より人気のあるスポットを避けたか、車道は混んだりすることはなく、無事に時間通り目的地に到達した。
 精進湖の水辺に近づいたら、大勢の人がカメラを構えて待っていた。寒い空気の中で、太陽の光が徐々に広がって、強くなってきて、富士山の横側から光の射線が見えてきた。6時50分頃になり、太陽がパッと顔を出し始めた。水辺にいる人達は同時に感嘆の声をだし、カメラをカシャカシャし始めた。それから、急いでいるように、太陽がぐんぐん昇り、湖の投影にある太陽も加えたら、2つの日球が同時に光り、その光は異常に眩しかった。でも、それは、幸せの瞬間だった。暗かった世界が一気に明るく、暖かくなってきた。それに、白い雪を冠った富士山は、より美しく見えた。こうして、私たちは、新年の最初の明るさを迎えた。その美しい光景を見れば、今年もよい年になれるのだろう。

6時50分頃になり、太陽がパッと顔を出し始めた

6時50分頃になり、太陽がパッと顔を出し始めた

寒い空気の中で、太陽の光が徐々に広がって、強くなってきて、富士山の横側から光の射線が見えてきた

寒い空気の中で、太陽の光が徐々に広がって、強くなってきて、富士山の横側から光の射線が見えてきた

 実は、中国にいる時、元旦を特別視する雰囲気はとても感じなかった。新年になると、あくまで3日間の休みをとって、普通の休日として過ごしていた。やはり、中国の人にとって、お正月の雰囲気は、旧暦の春節でしか感じえない。帰省ラッシュで実家に帰り、家族全員そろって、豊富な料理を食べながら、年越しする、というふうなお正月の感覚は、多分日本と同じだと思う。
 ところで、中国の春節休みは、7日間以上の休みもあり、その休みを利用して遠く旅行する人は、近年、増えてきた。その中に、日本に来る観光客はかなりの割合だった。昨年の旧暦新年に、日本の商品を爆買いした中国人たちの姿は、これからもどんどん現れてくるだろう。

 そういえば、今年、日本の正月セールも体験した。帰省によって静かになった住宅街と対比的に、正月の商業施設はいつもより混雑していた。福袋、大幅割引、セールなどで、商品と金銭の流動が見えるほど激しくなったことは間違いない。吉祥寺の商店街を歩いたら、普段から手頃の値段で人気の高かったユニクロ・GAP・ZARAなどの服装店では、いつもより低価になった分、人が多くなり、試着やお会計で待たされるだけでなく、押し合いへし合いさせられてしまうほど賑わっていた。それから、たまにゆくショッピングセンターでは、高価であったブランド品の福袋が早いうちに行列ができで売り切れてしまうし、お昼になると、トイレもごく普通の食事の店も大行列になっていた。どちらこちらも人でいっぱい、というのは、なんか日本らしくないみたいだけど、逆に資本主義だからこその日本らしさだなと思った。
 でも、新年という時点で、ものを買って、自分を奨励し、あるいは他人にお礼をするという発想は、だれにも理解できるのであろう。
 ひょっとしたら、(自覚していなかったけれども)この貧乏学生としての私も、日本人と同様にバーゲンで買い物をし、中国人観光客と同様にドラッグストアで爆買いしていたのかもしれない。
 こうして、日本式で、東京での二年目をよい始まりで迎えてみた。